ファンタジーな100のお題 13 南にある街 |
GRT様(E-No.1682PL)作 |
2004/10 |
南にある街 |
〔執筆者あとがき〕 |
南にある街 |
大学の入学式から二週間がたち、授業が始まりつつあった。 マナは今日の授業の様子を想像しながら筆記具や教科書を準備した。 医術の修業のためにアンダリュースに来たのはいいが、大学の入学式やその後の行事でみかける同級生の多くはかなり歳が離れている感じだった。少数しかいない大学生の中でも医学部に進むのは秀才が多く、十代半ばの学生が大半を占めている。もうすぐ二十一歳になろうという自分と同じ年頃の学生は、初年度のクラスでは今のところみかけない。 午前中の講義が終わって教室を出たところで、突然呼び止められた。振り返ると自分の肩ほどしかない背丈の女性が立っている。 「あなた、このクラスをとってるの?」 「……そうですが?」 「あなたこのあたりで見かけない外見だし、背が高くて 歳いってそうだから目立つのよ。いっしょに食事しない?」 「……そうですね、いいですよ。」 マナは相手を観察しながら食堂へ向かった。よくみると自分とあまり年齢は変わらなさそうだ。 「私はマリー=フローベル。あなたは? それと何歳なの?」 「……私はマナ=ミモロといいます。もうすぐ二十一歳ですよ」 マナの返答をきいたマリーは少し表情を変えた。 「そう、私もいま二十歳なのよ。他の子たちとはちょっと歳が離れてるのよね。」 そういうとマリーは食事をしながら自分のことを話しはじめた。 実家はここアンダリュースで交易をしており生活には不自由していないが、兄が結婚してから家にいるのがなんとなく気詰まりになって手に職をつけようと大学に入ったという。だが医者はいろいろと大変そうなので薬学をやりたい、などと。 「私はこれまで必死に勉強したことなんかなかったけど、 あなたはどうしてこんな歳になって入学してるの?」 「……家が医者だから実際の治療はもうだいぶ前からそれなりにはやっていますよ。 ここの街ではどうか知らないですが、 町医者には大学でていないのもたくさんいますしね。」 「ふーん。じゃあ知識がまったくないわけじゃないのね。」 マリーはまだいろいろ話したそうだったが、午後の授業が始まる時間だった。 「私はもう授業がないから帰るけど……。じゃあ、これからもよろしくね。」 翌日から同じ授業のときは、マリーはマナの隣に座るようになった。マナが遅れていくとマリーが二人分の席を取っている。マナからすると年少の学友たちの前で少々気恥ずかしくはあったが、マリーはそういった様子をまったく見せなかった。 そういう状態がしばらく続いたある日、郊外の街に二人で出かけることをマリーが提案してきた。 マナも遺跡には関心があったので行ってみることにしたが、その当日マリーが持ってきた荷物の量をみて少し不審に思った。 「日帰りで出かけるにはちょっと荷物が多いんじゃ?」 「向こうでやることがあるし、食べ物も必要だからこれくらいになるわよ。」 やむなく大量の荷物を持って二人は出発した。アンダリュースを出てから一時間くらいで目指す街に着いたが、日差しが強くかなり暑い。 今も人が住んでいる街中を抜けると、はずれの方に石造りの大きな遺跡があった。大昔の貴族か領主の邸宅のような様子で、広い敷地と建造物の中には人影が見当たらない。庭園の跡らしき場所の階段に腰掛けてマリーの用意した食事をとった。 「……ここはどういう場所なんだろう?」 「よく知らないけど観光に来る人も時々いるみたいよ。 でも今日は誰もいないわね。」 「……少し遺跡の中を見て回ってきたいんだけど、君はどうする?」 「ここにいるから好きなところをみてきたら?」 遺跡の中は特に危険そうな様子もなかったので、マナはマリーをそこに残して建物の中に入ってみた。部屋の間取りなどから見て神殿などではなく、やはり邸宅のようだ。 しばらく中の様子を見た後に戻ってみると、マリーは着替えて庭園の池で泳いでいる。 「……何をしてるんだ?」 「あ、もう戻ったの? あんまり暑いから水に入ってたのよ。 こういうこともあると思ってちゃんと準備してきたのよ。」 「……準備って……それであんなに荷物が多かったのか。」 ……どうもマリーと出会ってからいろいろと予想外のことが多くて振り回されている感じがする。だがそれはそれで面白い部分もあるし悪い気はしない。 しばらくの間はこの娘のおかげで退屈はしないだろうし、勉学だけの大学生活ということにもならなさそうだ。 そう思いながらマナは池から上がってくるマリーを苦笑しつつ眺めていた。 |
〔執筆者あとがき〕 |
別のゲームでミモロウの隠し子(何)でプレイし始めて、ちょっと両親の話も考えておこうと書きました。 このあと二人の間に生まれるのが「MaterialWars」のキャラである「アヤ・フローベル=ミモロ」です。 |